tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2020/8景気動向指数、数値は回復基調ですが

2020年10月07日 21時04分35秒 | 経済
2020/8景気動向指数、数値は回復基調ですが
 今日、内閣府から8月分の「景気動向指数」(速報)が発表になりました。
 これは日本経済の種々の分野の活動状況(製造、出荷、販売の数量など)を3つのグループに分けて合成し、日本経済の活動状況がどの程度の水準にあるのかを見やすく示すものです。

 3つのグループとは、次の3種類です。
・先行系列:機械受注、住宅着工、消費者態度など、先行きの動きを示す
・一致系列:鉱工業生産、耐久消費財出荷、小売業売上など、景気の現況を示す、
・遅行系列:雇用指数、家計消費、失業率など、景気に遅れて動く指数
 
 勿論現状を端的に示すのは一致系列ですからこれを中心に見ていきたいと思います。
 一致系列のCI(Composite index=2015年平均を100とした水準を示す)は2020年8月は79.4で、コロナのせいもあり随分落ちたものですが、非常事態宣言中だった5月からの動きを見ますと、71.2、74.4、78.3、79.4(8月)とかなりの回復です。

 政府は、非常事態宣言以降は、経済活動の回復に重点を置いて、無理ではないかと言われながら、7月下旬からGoToキャンペーンなど積極策を始めているのはご承知の通りです。
 それにしては8月の改善幅は小さいですが、コロナの終息が見えなくても、これだけ経済活動が回復するのですから、経済活動へのエネルギーが潜在していることは明らかでしょう。

 一致系列10項目の中の主要なものの5月と8月の数字を比較しますと
・最も基本的な鉱工業生産指数は79 → 89
・市場に出す生産財出荷椎数は74 → 89
・耐久消費財出荷指数は54 → 86 
といった感じで、生産場面では比較的波が小さく、市場状況による出荷は、それより波は大きく、更に家庭で使われる耐久消費財になりますと、落ち込みもひどかったが、回復も顕著といった様相が見られます。

 ここから産業、企業なりに、生産出荷を何とか平準化して操業や雇用の安定を図ろうとする企業の姿勢も見て取れます。

 最も市況を受けやすいのは、家庭に直結するところで、5月あたりは殆ど外に出ない家庭が多かったことで、交通、運輸、外食、レジャー産業などの打撃が酷かったことは、皆様ご経験のとおりです。

その中で耐久消費財の回復が目立つというのは、現場に行かずにスクリーン上でレジャーを楽しむしかないといった状態から大型テレビ、3密禁止で人に会えないのでネット上で交流するしかないから新たに新しいパソコン、更にはスマホといった、テレ〇〇、リモート○○が急速に普及したことによると言われています。

一方、日用品の取り扱い中心の小売業では衣料履物などは落ち込みが大きかったものの、日用品、生活必需品について見ますと、小売業(これは表示が違い、対前年同月の日の変化幅ですが)-19 → -2 とほぼ前年水準に復しています。

悪化が続いているのは有効求人倍率で、1.2倍 → 1.04倍に下がっています。これは失業率などと同様、遅行指標の性格が強いという事でしょう。

思いがけず伸びているのが輸出数量指数で 73 → 90と割合急速な回復です。中国経済の回復の影響も大きいのではないかと思われます。

 これからの動きは、経済活性化重視の政府と、国民一人一人が自衛手段としての感染防止努力のバランスの間で動くと思われ、今後の新規感染者数の推移が気になるところですが、日本人の真面目さとお行儀のよさで、何とか、ワクチン開発まで、頑張っていくことを期待したいと思う所です。

日本の国際収支の構造変化:貿易収支

2018年09月23日 11時42分52秒 | 経済
日本の国際収支の構造変化:貿易収支
 安倍さんは日米首脳会談に向けて出発しました。さて、トランプさんは、対日貿易赤字についてどんなことを言うのでしょうか。
 昨2017年のアメリカの貿易赤字は7962億ドル(約86兆8千億円)で、半分は中国、2位はメキシコ、3位が日本で、対日貿易赤字は前年比横ばいの688億ドル(7.7兆円)でした。

 この辺りの帰趨は首脳会談の結果を待つとして、ここでの課題は、輸出立国と言われて日本の貿易収支は、長い目で見るとどんな状況かという事です。

 結論から先に言ってしまいますと、日本の貿易収支は大幅黒字の時期から、収支均衡程度の段階にだんだん近づいているようです。
 グラフで見てみますと、こんな状況です。
貿易収支の長期推移(財務省「国際収支統計」:単位億円)


 平成19年度(2007年度)まではコンスタントに大幅黒字を維持していますが、2008年のリーマンショックで状況は大きく変わったようです。世界金融危機かという事で世界経済は委縮し、日本の輸出入とも大幅に減りました。しかし何とか黒字です。ところが23年度(2011年度)からは一転して赤字になります。

 赤字の理由は皆様疾うにご承知と思いますが、$1=¥120→¥80という円高です。これでは輸出競争力喪失の産業が多くなり、輸出不振と同時に、工場の海外移転が急速に進められた結果です。コストがドル換算で5割増しになった日本で生産して輸出してもペイしないという状況変化の結果です。

 この状況は平成27年度(2015年度)まで続きます。その後はご存知の日銀の政策転換、2発の黒田バズーカで$1=¥120に戻り、黒字を回復します。
 しかし見て頂くとお解りの様に、黒字幅はぐっと小さくなっています。リーマン・ショックの円高で、製造業の海外移転が大きく進んだ結果が明瞭に出ているという事でしょう。

 今も、日本企業の海外企業の買収、向上の海外建設が盛んです。機械受注統計でも現状 内需と外需は拮抗しており、商社経由などを勘案すれば、外需の方が増えている可能性は否定出来ません。

 これは何を意味するのでしょうか。つまり、日本の製造現場の海外移転が進んでいることの反映です。
 海外移転が進めば、日本の貿易黒字は漸減することになります。このプロセスがリーマンショック後の円高を通じて一段階進んだと理解できましょう。懸念を込めて言えば、今のアメリカの貿易赤字体質の方向に次第に進んでいく可能性もあるという事です。

 しかし、日本の経常収支は年間20兆円もの大幅黒字ではないかというのも事実です。
 この問題は、第一次資本収支、つまり海外から受け取る配当金や利息収入の増加によるところが大きいわけで、次回、その点の具体的な数字を追ってみたいと思います。

機械受注統計順調、設備投資頼みの景気に不安も

2018年06月13日 11時48分00秒 | 経済
機械受注統計順調、設備投資頼みの景気に不安も
 一昨日、6月11日に内閣府から2018年4月分の「機械受注統計」が発表になっています。
 新聞、TV でご承知の方も多いと思いますが、「2か月ぶりの回復」とか「リーマンショック前の水準を回復」といった見出しでした。

 ご承知のように、機械受注統計は企業の備投資意欲を示す統計で、その中でも「船舶、電力を除く民需」の項目は、景気先行指標として「景気動向指数」にも組み込まれ、注目されている指標です。

 今年に入っての動きを見ますと、「船舶・電力を除く民需(季節調整系列)」は、対前月比で1月8.2%、2月2.1%、3月-3.9%と減速傾向でしたが、4月は10.1%と急回復を見ています。

 対前年同月(年間の伸び)で見ますと1月2.9%、2月2.4%、3月-2.4%、から4月9.6%の回復です。特に製造業では、23.5%の高い伸びで、製造業企業の投資意欲が顕著です。

 4月の受注総額は25,080億円で、そのうち民需(国内)が10,587億円、外需が10,324億円、商社など代理店経由が1,303億円、官公需が2,582億円という事で、内需と外需が拮抗していることが解ります。

 機械受注統計からみられることは総じて企業が設備投資関係の先行きは強気だという事で、これは、併せて発表されている「4-6月の受注見通し」でも対前期比9.9%増になっている事からも知られます。

 以上のような状況なので、 GDPの四半期報告などと併せ考えても、今の日本経済は設備投資関連の元気さに支えらえているという状況が明らかです
 機械受注が堅調という事は、「モノづくり」に優れた我が国の経済体質の反映という面では確かに結構なことですが、心配なのは作る方は頑張っているが、そうした工作機械等で作られた最終製品の消費の方が低迷状態という事でしょう。

 外需も順調のようですが、アメリカなどからは日本の輸出への風当たりがますます強くなりそうです。

 経済で大事なのは生産と消費のバランスですから、機械受注の順調な回復を喜びながら、内需拡大のための政策、中でも、家計の消費支出を順調に育てるような社会政策、経済政策の必要がますます感じられるところです。

5月月例経済報告、消費の判断に甘さ

2018年05月24日 12時34分29秒 | 経済
5月月例経済報告、消費の判断に甘さ
 昨日、内閣府から「月例経済報告」が発表になりました。
 月例経済報告は毎月出ていて、日本経済の概況を主要項目別に淡々と記述する形のものです。

 根拠になる統計などは、だいたい2か月前ぐらいまでしか出ていませんので、5月の報告は3月辺りまでの統計をベースにしたものになっています。
 個々の主要統計については、注目すべき点や変化があれば、このブログでも発表の都度取り上げていますので、ご理解を頂いている向きもあるのではと思いますが、どんな表現になっているか概略を見てみましょう。

 <日本経済全体については>
1-3月は外需がプラスだったが、民間在庫や民間住宅建設がマイナスだったため、実質値は9四半期ぶり、名目値は6四半期ぶりのマイナスになった。

 中身に入りますと、
「個人消費は持ち直している」
 個人総合所得は緩やかに増加、消費マインドは持ち直している。家計消費の3月はマイナス、小売販売額も減少、先行きについては、雇用、所得環境の改善で持ち直すことが期待される。
「設備投資は緩やかに増加」
 法人企業統計の設備投資の昨年10-12月は増加、資本財供給サイドは持ち直し、ソフトウェア投資は横ばい、「日銀短観」「機械受注統計」も持ち直し、企業収益増で増加が期待される。
「住宅建設は弱含み」
 持ち家の着工は横ばい、分譲住宅は弱含み、首都圏マンションは横ばいで、今後は弱含みと予想される。
「公共投資は底堅く推移」
 地方単独事業の増加で底堅い推移が予想される。
「貿易収支は黒字横ばい」
といったものです。

まとめとして報告の冒頭に書いてあるのは
「景気は緩やかに回復している」
「先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。」
という言葉ですが、どう見ても、この報告では、GDPの最大の部分である個人消費については、見方が些か甘いように思います。
    
 雇用環境や所得環境が改善するといっていますが、それが春闘賃上げ率の多少の増加を勘案しているとしても、「消費性向の低下には全く触れていない」という点、現政権の経済政策上の最大の問題である点を全く見過ごしているという分析には問題を感じます。
 
 私自身も見通し通りに行ってくれれば良いと思いますが、内容をつぶさに見れば、もっと「やれる事、やるべき事」があったはずですよという所でしょうか。

景気対策:政府が駄目なら労使が頑張れ

2018年05月17日 11時41分24秒 | 経済
景気対策:政府が駄目なら労使が頑張れ
 前回、今年に入って1-3月期のGDP統計が9ヶ月ぶりマイナスになった中身をみましたが、基本的には消費不振でした。

 企業活動の方では、景気の先行指標として知られる「機械受注統計」(総務省)も今日発表になって、3か月ぶりのマイナスということで、昨年来上向いてきた景気に翳りが出るのかという心配も一部にはあるようです。

 GDPの方は、構造的な消費不振という重い課題が指摘されていますが、機械受注については、時期的な踊り場で、一般的な景況を示すと言われる「船舶と電力を除く部分」では受注増になっていますし、3か月後の6月の見通しでは、全体的に増加に転じていて、総務省も強気の発言をしているようです。

 折角、順調な経済活動を取り戻し、米朝会談やイランの核合意、エルサレム問題など多様な不確定要素を含みながらも世界的に経済は安定成長路線に復帰するのではないかと期待されている時です、日本経済も、日本自身の政治問題の混乱で経済の足が引っ張られるようなことは何とか避けたいものです。

 とはいえ、この所、政府発言に対する国民の信頼度は極端に低下し、政府が何を言っても、国民はまず「本当かな?」と首をかしげる状態です。
 これではまさに「信なくば立たず」で政治の根幹が揺らいでいるのですから、政策を通す前に、まず政府への信頼を取り戻すプロセスが必要でしょう。

 それにもう1年以上もかかって、信頼度が上がらない状態ですから(政権支持率低下)、残念ながら、未だ信頼回復は容易ではないでしょう。

 企業が一生懸命頑張っているから大丈夫という面は確かにありますが、政策の停滞が余りに長期化すると、矢張り経済にとっては危険でしょう。
 
 ならば、混乱する国会はそれとして、日本の労使のナショナルセンター、連合と経団連が、日本の経済活動の担当者、責任者として、協力して議論を深め、日本の経済政策のあるべき方向を国民や企業に示すような活動をしてほしいと思います。

 日本の労使は同じ「日本丸」という船に乗っているのです。当面の意見は違っても、最終目標は共通でしょう。

嘗て、日本の労使は、二回のオイルショック対策から始まり、土地バブルの問題や、円高で世界一高水準と言われた物価問題、さらには通勤ラッシュ対策などについて、協力して研究し、結果を世に問うた行動もあったと記憶します。

 特に消費不振の問題は、労使が直接に関係する問題です、違いを強調するより、共通点を求めるという日本の伝統文化に根差す思考方法で、日本の労使が、改めて今、積極的な役割を果たすことを期待したいと思っていますがどうでしょうか。

変動相場制は怠惰を正当化?

2016年08月10日 09時25分33秒 | 経済
変動相場制は怠惰を正当化?
 円レートはこの間まで$1=¥120でした。もしこのレートが固定相場制で、何年か安定的に続くことが決まっていれば、日本企業の投資態度は違ったでしょう。
 「此の円安状態がいつまで続くかわからない、早晩揺り戻しが来るのではないか」多くの企業はそう思うのでしょう。
 
 政府は企業に積極投資と賃上げを奨励しましたが、企業も労働組合も半身の構えでした。果たして現状は101~102円とほぼ20円幅の円高です。
 キャノンのように、無人化工場を目指し、国内コスト上昇に対抗できれば素晴らしいですが、矢張り投資するなら海外で、と考える企業は多いはずです。

 機械受注統計が景気の先行指標であるように、投資の盛んな経済は成長し、投資がなければ先行き停滞というのが経済の原則です。

 おカネがあっても投資をしなければその金は往々投機に回ります。マネー経済学や金融工学が支援します。しかし投機家がいくら儲けても、それは他人の富を自分に移転させただけで、基本的にはギャンブルと同じセロサムの世界ですから、経済成長には関係ありません。

 ファンドマネジャーなどは巨額な報酬を受け、実業の経営者とはケタが違ったりして、優秀な頭脳が実業に進まずファンドマネジャーを目指したりします。これは経済成長にとっての損失です。
 巨大化する金融取引でリーマンショックのような破綻が起きれば、世界中の実体経済が大混乱し、世界経済の成長が何年も停滞します。

 こんな具合で、変動相場制は、実体経済の成長を計画する前に、先ず為替レート関連の仕事に頭脳も体力も使わなければならないので、これも大きなロスでしょう。

 ところで以上は主な副作用の方で、本当に問題にすべき問題点は、頑張らないことを是認する、はっきり言えば、変動相場制が「怠惰を正当化する」事にあるのではないでしょうか。
 
 与えられた為替レートの下で、各国が経済運営をします。頑張って生産性を上げた国は競争力が強くなり、競争に勝って経済成長します。負けた国は当然我が国も生産性を挙げようと失地回復の努力をします。競争が成長を促進するのです。これが本来の経済理論です。

 ところが、変動相場制が合理的に働くと、10%生産性を向上させた国は10%為替が切りあがり、5%生産性を上げた国は5%切りあがり、3%の国は3%切りあがり、生産性を挙げなかった国はそのままで、競争力の差はチャラになりメデタシ、メデタシということになります。生産性向上に頑張った効果は消えるわけです。

 マラソンで、速い人には速い分のハンディを付けみんな同じようなタイムの記録がでるようにするようなもので、しかも現実の為替の世界は、そんなにきちんとハンディが決められていませんから、ハンディで得した人が優勝!なんてことになるのでしょうか。
 頑張る意味がなくなります。

 例えが適切かどうかは別として、変動相場制では、日本のような国は、頑張れば頑張るほど円を切り上げられてしまう可能性が高くなるのです。
 逆に頑張らなくても、為替レートが下がれば競争力は変わりません。無理に頑張る必要な無くなります。結果、世界経済は停滞するということになります。

 以上が、実体経済の競争力を為替レートがきちんと反映した時の、「いわば理想的な変動相場制」の状態なのでしょう。
 現実には為替の切り下げ競争は当然起きるでしょう。為替操作が最も重要な経済政策になりかねません。
 今の変動相場制のままで何時まで行くのか、G7、G20、IMF、OECDなどは、将来に向けて、本格論議をすべきでしょう。勿論世界の経済学者も。

2015年上半期のテーマ

2015年10月09日 09時56分42秒 | お知らせ
2015年上半期のテーマ
(ほとんどのテーマは、その儘google tool barで検索可能です)
9月 
ゴーヤと名月と   国連の活用の仕方   米中首脳会談の限界   安倍政権、経済に注力を表明   プラザ合意30年   シルバーウィーク、5連休   FRB利上げ見送りの読み方   日本産業の誇りを失う武器輸出   金融の現状維持は上策   FRBは利上げをするのか   消費増税と4000円の還元案   安定を望む世界、深まる混乱   混乱期に突入するか、世界経済社会   学卒就職ルールに妙案はあるのか   要注目! 新エネルギー開発の多様な進展   

8月
難民問題、もう一つの視点   増加傾向のアメリカの経常赤字   文化遺産破壊、余りにもみじめな人類の統治能力   経済波乱はマネーか実体経済か   世界経済一波乱か、問題は米・中   もう少し頑張りたい、4~6月GDP速報   ホタル飼育とDNA論議   多様性の「共生」を認め合う社会を   人民元相場、世界市場をかく乱   アメリカの利上げは現実に?   猛暑と電力ピークカット   トヨタの決算発表と今後の日本経済   TPP 何を目指す?   

7月
格差問題と最低賃金   企業の構成者は、株主か? 従業員か?   コーポレートガバナンスと労働組合・労使協議制   改めて国民の意思を問うべきでしょう   「双子の赤字」は金融政策で救えるか   ギリシャ問題の現実とアメリカ   経営の長期視点と短期視点 2   経営の長期視点と短期視点 1   人材育成と人事異動   機械受注の安定的な増加   平和な地球のためのエネルギー問題   残念だったギリシャ国民の選択   難しくなるか、中国経済   ギリシャの国民投票:問われる国民の資質   日銀短観:安定成長を示唆

6月
ギリシャの悲劇   マネー資本主義と消費不振、労働経済(実体経済)の視点から   物価超安定の時代: デフレ傾向をもたらすもの   物価超安定の時代: 物価上昇の原因は?   物価安定の時代: 何がそうさせるのか?   前向きの経営、後ろ向きの経営   ゴルディロックスとアメリカ経済   トヨタの新型株式と集団的自衛権論議   付加価値の分配で社会の様相と将来が決まる   付加価値の理解促進のために   絶妙な黒田総裁発言   マネー資本主義に一石、トヨタの新型株式   本年1~3月GDP第二次速報   国際司法裁判所がありますが・・・   正規・非正規の雇用・賃金構造   実質賃金、プラス転換   エネルギー問題、日本のアキレス腱?   

5月
2015年、今年のホタルは   要注意? ドル高・円安   連騰の日経平均をどう読むか   日本的経営の現実:ROEより健全な成長   日本経済の成長、安定したプラスに   ROE(自己資本利益率)重視、再論   本来の経営のあり方と雇用の意義   新緑・深緑探索、「みどり狩り」は如何   FRB、株バブル牽制の意図   アメリカの危うさ、中国の危うさ   今日はみどりの日   

4月
正常な段階に移行する日本経済   新入社員、仕事優先は半数切る   ホンダジェット羽田に飛来   総資本利益率vs.自己資本利益率   ワシントンG20とアメリカを見る目   バブルなのか、バブルでないのか   中国の「ニュー・ノーマル」   AIIB、中国、アメリカ、日本   セキュラー・スタグネーション   平均消費性向に注目の必要が・・・   生産と消費のバランスに適切な舵取りを    日本経済、今後の安定成長に必要なもの   改めて日本経済の立ち位置は   平成14年度(2014年度)下半期のテーマ      

機械受注の安定的な増加

2015年07月10日 11時39分42秒 | 経済
機械受注の安定的な増加
 ギリシャ問題はそろそろ大詰めのようですが、中国では株価急落問題が起こり、日経平均も乱高下の連続です。
 話題としてはマネー問題は派手ですが、実体経済は地味です。その実体経済は比較的安定で、日本の場合は特に、安定した成長路線を辿りつつあるようです。
 
 昨日、5月の機械受注統計が発表になりました。機械受注統計は景気の先行指標の1つですが、5月は前月より0.6パーセント伸びて(船舶電力を除く民需)、リーマンショック前以来の最高を記録したとマスコミは報じています。

 前年同月比でみるともっとはっきりしますが、昨年5月比で19.3パーセントの伸びです。先日(7月1日)の日銀短観について見たこのブログでも、企業の投資意欲の強さを指摘しましたが、日本の企業もいよいよ積極経営に進み始めたようです。

 もちろん海外投資も今日では当然視野の内ということではあるでしょうが、国内投資はお休みしてでもというのは、円高に苦しんだ2012年ぐらいまでのことで、状況は次第に変わって来ています。

 かつて製造業の国内回帰の例として挙げさせていただいたダイキンの空調機器についても、製造時間半減で国内体制確立といった報道も最近ありましたし、日産自動車が国内生産を大幅に増やすという報道も、今日の新聞でした。

 こうした国内投資は$1=¥120といった状況、円レートの正常化の下で可能になるというのは当然ですが、同時に、単なる拡張投資ではなく、多様な技術革新を組み込み、織り込んだ、新しいモノづくりの在り方、新しい機能を持った製品の生産と常に同時進行で進んでいるのです。それが強さの源泉でしょう。

 マスコミは、鬼面人を驚かすようなマネーの話が多くなるのは致し方ないとしても、こうした実体経済の動向に常に注目しておくことが本当は大事のような気がします。

 同時に、以前から書いていることですが、実体経済の発展に役立つための金融・マネー経済が、投機的な動きに走る結果、実体経済を毀損するような行き過ぎた状態に陥る(典型はリーマンショック)ことに対する厳しい判断を、国際金融機関、各国政府はじめ関係業界、そして広く一般国民も堅持したいものです。

2014年7-9月期GDP速報

2014年11月17日 12時28分30秒 | 経済
2014年7-9月期GDP速報
 標記の速報が出ました。実質GDPは前期比でマイナス0.4パーセント、マスコミ発表で使われる年率換算、いわゆる瞬間風速ではマイナス1.6パーセントです。
 安倍さんは、集計過程でこの数字を聞き、内閣支持率の更なる低下を心配して消費増税先延ばし、衆院解散総選挙を決心したのでしょう。
 選挙で勝てば、「国民は安倍内閣のやっていることを支持している」という主張が成立するという論理でしょう。

 この発表で日経平均は午前中に400円以上も下がって、国際投機資本は「日本経済もいよいよ不況化か」などと論評しているようですが、一方で円を買って、います。

 短期的なキャピタルゲイン極大化を狙う筋の話は別として、今回の発表をよく見ますと、日本経済は矢張り健全な成長路線に向けて、個々の問題を乗り越え、ゆっくりですが着実に進んでいるように思われます。

 マイナス0.4パーセントという数字は前四半期のマイナス1.9パーセントからは改善で、放っておいても、来期はプラスに転換すると思われます。
 中身を見ても民間最終消費支出はプラス0.4パーセント(数字はすべて実質値)で、マイナスになっているのは、企業の設備投資、民間住宅投資です。

 消費は消費増税の反動減、輸入物価上昇があっても(4-6月期の-5%から)プラスに回復、企業の設備投資は円安の行方も睨んで慎重ですが(-4.8から)、マイナス0.2パーセント、機械受注増加の動きなどから見ても、来期にはプラスでしょうか。

 落ち込みの大きい民間住宅ですが、マイナス10.0からマイナス6.7(4-6月期と7-9月期)ですが、住宅建設の判断は何年もの長期で判断すべきものでしょう。
 余計な事を言えば、何十年も住む家に取得時に纏めて消費税を掛けるシステムがおかしいので、耐用年数でも基準にして、分割納税にすべきものでしょう。

 こう見て来ると、日本経済には現状特に心配する点はないようで、最近の企業の活発な研究開発、新技術実用化の動きなどを見ても、力強く感じておられる方が多いのではないでしょうか。

 景気が悪くなる時には、まず主要企業が減益になり、その回復が見えてこないというのが最も解り易い先行指標でしょう。
 その点から見ても、表面の漣に一喜一憂せず「真面目に働くことだけが、経済成長を齎す」と達観して、日本人らしく真摯な努力を続けるのが最善の道でしょう。

企業活性化・経済成長への図式

2014年05月27日 12時48分28秒 | 経済

企業活性化・経済成長への図式

 前回「経済回復に自信を」と書かせて頂きました。

 その中で、直前に発表された機械受注の増加を先行指標の表れとして、活発化する採用と人材育成意欲、多様な技術開発の展開、日本の技術、日本の製品に対する世界各国からの信頼、人材開発への投資の再開、そして真面目な日本人の努力と頑張りへの期待を挙げました。

 

 もちろん、経済というのは人間のやる活動です時から、人間の心の持ち方というのは基本でしょう。しかし、国際的に強いられた過度な円高といった逆風の中では、人間の努力もあまり報われないことも確かです。

 幸い、日銀の新政策により、20円幅の円安が実現し、国際社会もそれを認めざるを得なかったというのが現状でしょう。

 

 これから日本経済の活性化が始まるという条件が整備された中で、上記のような日本経済の動きが始まっていることが、明るい将来展望の理由です。

 

 経済発展には各種の景気循環論など多様な説がありますが、やはり基本はイノベーションでしょう。

 

 

 上の図では太い縦の矢印の破線がイノベーション(技術革新)で、例えば、最初が蒸気機関の発明、次が電気モーターの発明、3本目がIT技術といった具合に考えますと、横線がそれによって達成可能な経済レベル、ただしそれにはすぐには達せずに、その技術革新を種々な形で応用発展させる人間の努力があって、結果的には斜線の「実現過程」ということになるのでしょう。

 

 そして、技術革新も、それを生産技術、製品・商品・サービスに仕立てるのも、すべて人間の力です。

 

 大分前の話ですが、ある企業の社長さんと飛行機で隣になり、「社長の会社な何故毎日のように日経産業に記事が出るようないろいろな開発が出来るのですか?」とお伺いしたら。

 「原因はいろいろあるでしょうけれど、かつて私が人事部長だったころ、積極的に人材採用と育成をやったことの結果でもあるような気がします。」という答えが返っていたことがります。

 

 矢張り、これからの日本経済の活性化には期待していいのではないでしょうか。


これからの経済回復に自信を

2014年05月22日 11時45分53秒 | 経済
これからの経済回復に自信を
 求人倍率が1を超えてきました。学卒求人も売り手市場化の気配です。地域や業種などによっては非正規社員の求人が急速に困難になり、非正規社員の正社員化、正規社員の比率の増加などの傾向に急進展も見られるようです。

 機械受注(船舶・電力を除く民需)も好調です。統計を現方式にしてから(2005年以降)最高の伸び率を示したとのことです。
 これは企業が設備の更新、高度化に本格的に動き始めたということですから、これから資本財、生産財、消費財の生産増の原点が動き始めたという事でしょう。

 企業は海外投資を重視し国内需要が心配といった意見もある中で、統計は確実に国内経済の活発化の動きを示しています。
 特に重要なのは、雇用関連の活発な動きです、新卒採用の活発化は企業の社内育成重視につながるものです。非正規の正規化では管理職要員の育成確保の動きが明確です。
 企業が人を育てることは企業の発展、経済の成長、社会の進歩に必ず繋がります。

 もう一つ大きな動きは、技術開発の活発化を示すようなニュースが多くなってきたことです。
 経済活動の基本であるエネルギー分野では再生可能エネルギー関連の技術の高度化、省エネ技術の進展も着々ですが、特に私の興味を持っている蓄電分野では安全性の高い個体蓄電池技術、燃料電池に鉄粉の還元剤を併用して水から水素を取り出し供給するシステムなど画期的なものが見られます。
 降雪地の自治体に見られる下水熱の活用による融雪装置技術では、下水管の補修・強化技術など多様な技術が複合しています。

 最近世界でも真似するところが出てきたヒューマノイド(人間型ロボット)た動物型ロボットなどが介護や癒しの分野で、急速に発達していることも注目すべきでしょう。身障者の運動能力補助装置関連の技術開発も著しいものがあるようです。
 特にこうした分野は人間と機械の間の摺り合わせ技術が極めて大切ですから、日本人の感性やキメの細かさが最も生きる分野のように思われます。

 日本食の世界文化遺産化もありますが、伝統的日本食だけでなく、日本の加工食品の安全性は勿論、品質の安定、格段の味の良さも日進月歩で、まさに世界が認める状態になっています。これも日本人の味覚や食感といった微妙なところが生きる分野でしょう。

 すでに日本の水技術は世界に定評のあるところですが、水道事業の総合システムの海外提供の始まっている様です。私事ですが、この数年飼育しているホタルの幼虫(極めて環境に敏感)も東京の水道水でしっかり育っています。

 こうした状況証拠を積み上げてみますと、昨年来の円安実現による、日本経済の余裕が、人材の育成活用と新規投資意欲、それらを支える技術革新という経済発展のサイクルをはっきりと動かし始めた様相が見られるように思われます。

 国際関係がギクシャクするなどいろいろな問題点もありましょう。しかし日本が地道に世界に役立つ、世界の人々が喜ぶ多様な分野での開発と成長を続けていけば、それは自然に多様な分野で世界の人びとに役立つ日本という認識を定着させることになり、日本経済社会の一層の発展と、国際貢献の充実につながるものでしょう。

 そうした積極的な動きへの胎動が漸く見えてきた日本の現状を、さらなる着実な発展に繋げていかなければなりません。そしてそれはこれからの日本人の頑張り方次第でしょう。前途は見えてきたと思っています。皆様のご意見も是非お伺いしたいところです。

雇用統計は先行指標?

2010年04月05日 13時46分30秒 | 経済
雇用統計は先行指標?
 アメリカでは毎月、月初めの金曜日に前月分の雇用統計が発表されます。そしてこれが、ご承知のように、「株価」に影響するということで注目されているわけです。

 アメリカは日本より格段に株式投資に関心を持っている個人が多いそうで、デイトレーダーなどもたくさんいて、こうした政府の発表に注目しているのでしょう。
 そしてそれが、日本でも、関連記事、関連サイトなどで報道されているのをよく見かけます。アメリカの株価を見ていれば、日本の株価動向が解るからでしょうか。

 ところで、総務省発表の景気動向指数というのがあります。29の経済指標を集め、そのうちの12を先行系列、11を一致系列、6つを遅行系列という風に分けて、改善している系列数から悪化している系列数を引いてプラスなら景気は改善、マイナスなら景気は悪化、といった形で景気動向を判断するためのものです。

 株価は景気を先見するということで、東証株価指数は先行系列にはいっています。その他、機械受注、消費者態度指数、新規求人数(除学卒)などなどが先行系列にはいっています。
 一致系列は、鉱工業生産指数、大口電力使用量などを筆頭に有効求人倍率(除学卒)などが入っています。
 遅行系列の代表は法人税収入でしょうか、常用雇用指数、失業率(逆相関)はこの中です。

 もともと、雇用というのは景気がよくなることが解って、企業はようやく採用を始めるのだろう、ということで、雇用指標は遅行系列というのが一般的理解でしたが、上記のアメリカの傾向を見ると、非農業雇用者数と失業率(日本ではともに遅行系列)が株価を動かしているようです。

 これでは遅行指標(雇用動向)が先行指標(株価動向)を動かしていることになるわけですが、それはそれなりに意味のある動きではないでしょうか。
 現在のアメリカの景気は「消費支出」に大きく依存しています。クリスマス商戦などに代表されるように、消費が盛り上がれば「景気回復」と認識されるわけです。
 そして、消費を活性化させる最大の要因は「雇用における安心感」でしょう。

 今、日本経済は深刻な消費不振に悩まされています。実は、以前から関連の専門家の間では、消費動向は、賃金ではなく、雇用の安定と強い相関関係を持つことは共通認識です。
そうした中で、雇用動向が景気の先行指標(の先行指標)になっているという現実に改めて視点をあてることも大変大事になってきているのかもしれません。